この地に暮らす人、繋がりがある人。
東郷と関わりを持つ「村民(villageピープル)」
が選んだ、お気に入りの場所

能勢 浩介 さんのお気に入り
『仏坂峠』

仏坂峠 里と山の境界で獣と出会う

農家民宿「みちくさ」の駐車場から店とは反対側の山へと続く道。4歳の娘は「お山のトンネル」と呼びます。 大きな木が道の両側に茂り、昼でも薄暗く、山へと続く登山道か、獣道といった雰囲気で、みちくさへ来られるお客さんもたまに間違って登っていかれます。その気持ちすごくわかります。 国道477号線の地黄と府道106号線の上田尻を結ぶ、おそらく地元の人しか使わないであろう細いこの峠道を、たまに通勤で通ることがあります。すれ違い不可に加え、石が転がる悪路のため、万人にお薦めはしませんが、途中に竹林あり、棚田あり、短い道ながら風景が変わるのでちょっとした森の散策気分を味わえます。 しかし、僕が最も惹かれるのは、野生動物にしばしば出会えることです。夜は、勝手にナイトサファリだと心の中で呼んでいるほど、獣の世界です。 里と山の境界であり、夜には人と獣の立場が逆転します。 僕は畑を何度も獣に荒らされた苦い経験があり、そのたびに悔しい思い、怒りなのか何なのかわからない、やりきれない思いを感じてきました。その怒りの矛先をどこに向ければよいのかまったくわからないのです。 檻で捕まえて、肉を食べ、頭蓋骨を標本にすることで何か見えるかなと思ったことがありましたが、見えたのは肉の美味しさと骨だけでした。 結局のところ怒りでは何も解決せず、野生動物とはこれからも共存、共生していかないといけないということです。 峠道でシカと出会うと、じっと目が合い、何かを訴えかけているようにも見えます。 その瞬間は独特の間が生まれます。 少しでも近づく素振りを見せるとひょいっと翻り山へ去っていきます。敵でも味方でもない、そんな存在なんだと思います。 この辺りは生物が多様で、植物、虫、動物とたくさんの色んな生き物が棲んでいます。ぜひ生物多様性に触れ、いろんな生き物に出会いに来てください。

能勢 浩介

農家民宿みちくさのスタッフです。 石窯、農場の管理、蜜蜂の飼育、デザイン等を担当しています。前職はグラフィックデザイナーでした。ユニークな農のカタチを模索していて、種(タネ)の交換会も主催をしています。

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