台湾原住民に里山暮らしの知恵を学ぶ 〜「縁」が「宴」となり「円」となる〜

台湾の人々に里山暮らしを学ぶ

2019年10月20日。野間中にある「なつかしさの社(もり)」で、台湾原住民であるアミ族・セデック族の方々から、里山保全活動についてのお話を伺いました。国は変われど、里山に住む人たちの悩みはどこも一緒のようです。「少子高齢化」や「耕作放棄地の増加」、「生物相の減少」など、台湾の人たちの話に出てくる悩みは能勢にとっても共通のものばかり。具体的にどのような方法で、これらの課題を解決されているのでしょうか?

勉強会でのお話しをほんの少しだけご紹介します。

勉強会の会場である、なつかしさの杜に到着した台湾のみなさん。築400年の日本家屋に興味津々。
台湾視察団(写真左側)と地元能勢から勉強会に参加された方々。

里海・里山に囲まれて暮らすアミ族

アミ族の人口は台湾の原住民族の中でも最も多く13万〜14万人。台湾東部・台東(たいどん)県にある「都歴(とりく)」という部落で暮らすアミ族の吳筱帆(うー・しゃおふぁん)さんが発表してくださいました。

都歴は、里山と里海に囲まれた海外沿いの集落。成人すると民族衣装を身にまとい、里山と里海についての仕事を任されるようになるそうなのですが、「成人した若者が町へと働きに出てしまい、高齢者と幼い子どもしかいない」「労働力が少なく、耕作放棄地が増えてしまった」という状況だそうで、会場からも「能勢と一緒やんか」という共感の声がわきました。しかも、その耕作放棄地というのも、能勢にたくさんあるような、小区画の棚田なのです。

里山と里海に囲まれた海外沿いの集落。アミ族の豊年祭では色彩豊かな衣装が着られ、歌や踊りが行われる。
アミ族の吳筱帆さん。パワーポイントを使ってアミ族の里山の暮らしを説明してくださった。

コシヒカリの栽培にチャレンジ

棚田を普及し、在来品種のコメに加え、なんと、コシヒカリの作付けにもチャレンジ中だそうです。台湾は1年に2回作付けする二毛作ですが、温暖な気候のせいか、日本生まれのコシヒカリをつくるのは難しらしく、害虫や、日本でも夏に熱風が吹く海沿いの地域で起こりやすい「白穂」に苦戦中。でも、「在来種より美味しい(笑)」と、吳さん、前向きです。 森林では、豊富な植物相を利用した養蜂の仕事を生み出そうとしています。しかし養蜂もそう簡単にはうまくいかず、群れをスズメバチの大群に襲われて大変な思いをされているそうです。でも、「もう養蜂はやめにして、スズメバチを売ればいい(笑)。スズメバチを漬けたお酒は健康にいいから」。次々と新しく浮上する課題をも楽しんでおられるように見えました。

在来品種のコメに加え、コシヒカリの作付けにチャレンジ。豊富な蜜源を利用した養蜂にも取り組んでいる。

「民族植物」を今に活かす

アミ族は「草をたくさん食べる民族」だそうです。様々な野草を高山野菜として食したり、生活に使ったりする知恵が蓄積されています。そこで、古老たちに聞き取り調査し、「民族植物」としてとりまとめ、特産化しています。たとえば、「男にいい(滋養強壮)」という「カワラヨモギ」は、薬草茶やエッセンシャルオイルにしたり、料理店と提携し「ニワトリと一緒に煮込んだスープ」にもなっているそうです。

「ここに来るときに、カラスザンショウがありましたね。あれは食べられます」と吳さんの話に「あれ、食えるんや」と、どよめく会場。「豚肉と一緒に煮込むと臭みがとれて美味しいですよ」。気がつかなかった地域資源と、その活用方法をさらりと教えていただきました。

台湾の6次産業化の例。都歴米や都歴ハニーなど。能勢と同じように地域資源を活かして商品化し、付加価値を上げる取り組みが盛ん。

標高3000mで暮らすセデック族

「標高3000m。台中から車で1日ちょっと」「いつも、しゃがんで寝る」という驚きの自己紹介で登場したのは、セデック族の劉忠厚(りゅう・ちゅんほう)さんでした。セデック族の人口は5000〜6000人。今回は台湾内陸部にある能高山近辺(春陽村、精英村、都達村)での計画を話していただきました。

セデック族の劉忠厚(りゅう・ちゅんほう)さん。台湾の歴史アクション大作「セデック・バレ」にも出演している。
時折冗談も交えながら有機農業の取り組みについて語っていただいた。

ウンカと共存する紅茶づくり

アミ族もそうでしたが、セデック族も有機農業を推進しています。山の資源や環境を活かしたシイタケやお茶などの農産物を、できるだけ農薬を使わずに栽培されています。それゆえ、茶の害虫であるウンカ(ヨコバイ)がつくと葉っぱが黄色くなりますが、「ウンカに葉を吸汁されると、(チャが防御物質を出し)香り高いものに仕上がる」性質を利用し、ひと味違った紅茶に加工、販売されています。また、それらのパッケージもセデック族の伝統的な柄を使った美しいものでした。

特に気になったのは、標高3000mにあるセデック族ならではの、荒れた山道の整備のお話。コンクリート製品など人工物はできるだけ使わず、山にある材木や石などを上手に使って、美しくも味のある山道を施工されていました。

山の資源や環境を活かしたシイタケやお茶などの農産物。パッケージもなかなか素敵なデザイン。
台湾と能勢の里山交流勉強会は静かな熱気に包まれた。

地元能勢の秋鹿とノマディックで盛り上がる

勉強会のあとは懇親会。能勢・ノマディック(野間稲地)が料理を出してくださいました。台湾の人には、栗が入ったチマキが特に人気。秋鹿酒造の日本酒は「買って、ホテルで飲みたい」という人まで出現しました。それにしても台湾の方々の飲みっぷりといったら豪快。「乾杯!」という号令が、方々から、何度も何度も聞こえました。

地元のノマディックによる豪華なケータリング料理。台湾の人々にチマキが大好評だった。
セデック族の劉さんと秋鹿の酒を酌み交わす能勢なつかしさ推進協議会の平田会長。

縁が宴となり、円となる

最後には、アミ族の方々が焚き火を囲み、驚くような声量で伝統の「お礼の歌」を歌ってくださいました。やがて、日本人もその円に混ざって、そのお返しに「六甲おろし」(!?)を熱唱。 せっかくできた台湾の人との「縁(えん)」と、「宴(えん)」。それを再び繋がり循環する「円(えん)」として交流を続け、今度はこちらから台湾に足を運び、知恵を分かち合いたいものです。

台湾の人々と能勢の人々が焚き火を中心に手を繋いで、歌い踊った。
言葉は通じなくても、心が通じ合った。次は能勢から台湾に足を運んで更に交流を深めたい。
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