西田塾 第0回 あけびの里を楽しむ

栗と能勢が盛り盛りの体験ツアー

栗農家の西田彦次さん
「今日は色んなところから来てくれはったけど、これをきっかけに、この能勢を、自分の第2の故郷として感じて欲しいんや。そういうふうに思っていただけたなら、大成功。グッド👍」

栗農家の西田彦次さんの挨拶で始まった栗の収穫ツアーは大盛況となりました。まずは、参加してくださったみなさま、ありがとうございました!

ただ栗拾って収穫体験するだけではなく、生産の現場である能勢の里山の魅力を存分に体感してもらおうと、生粋のエンターテイナーである(?)西田さんが工夫に工夫を重ねた結果、要素が盛り盛りのツアーとなりました。ここではその様子を、少しだけ……、ほんのさわりだけ、ご紹介します。

まさかの苗木栽培の話からスタート!?

「じゃあ、まずはこっち」
と、西田さんが参加者を誘導したのは、栗園とは逆方向にある、苗木畑でした。

 

苗をつくるには収穫した栗をタネとしてまくんやけど、ここで質問。
このタネをどっち向けにまいたらエエと思う? 
とんがったほうを上にしたほうがエエ思う人ー。
横向けがエエと思う人ー

ちなみに正解は、横。そのほうが、芽や根っこが素直に伸びるからです。
そこから「接ぎ木」などの本格的な苗づくり技術の話へ。いきなりの専門的な話になってしまい伝わるかどうかハラハラしましたが、現物が目の前にあるからか「なるほど」「接ぎ木ってすごいですね。そんなんできるんや」「確かに、銀寄の苗木は葉っぱが違うなぁ」など、ちゃんと伝わった様子で、安心。
専門的な話にも熱心に耳を傾ける参加者のみなさん

西田流ジェットコースターで、子どもたちおおはしゃぎ

だけど、子どもたちはどうでしょうか。ちょっと難しい話に疲れちゃって、栗拾いどころじゃなくなるんじゃないか……。そんな心配をしていると、西田さんがニヤリ。

「もうちょっとしたら、おっちゃんがジェットコースターに乗せたるからな

……ジェットコースターなんてあったっけ?

ジェットコースターの正体は、土や堆肥などを運ぶために使う運搬車でした。
子どもたちは運搬車に乗って、ガタガタ揺れる山道におおはしゃぎ。大人たちは東郷の風景を楽しみながら、途中の畑で栗を拾いながら、栗山を登ります。
これが西田流ジェットコースター
子どもたちを乗せた運搬車と、あとに続く大人たち

羽釜で炊いた栗ご飯を手作りの小屋で堪能

せせらぎが流れ、冷たい山水を飲んだり、サワガニを捕まえたりできる
この栗山を西田さんは「あけびの里」と呼んでいます。道中には、栗を食べに来るイノシシやシカを捕まえるための箱罠や、栗の花をうまく授粉・結実させるためのミツバチの巣箱、知り合いが玄米茶をつくるために植えたという小さな田んぼなどもありました。このような西田さんの工夫が「あけびの里」の見所となり、能勢の里山を存分に楽しめるようなスポットになっています。

お腹がすいた頃にようやく辿り着いたのが、山頂にある「あけびの館」という手づくりの小屋。まだ西田さんの髪が真っ黒だった頃に、友人たちと本気でつくった「大人の遊び場」です。
授粉・結実の手助けとなり、花の蜜も採取できる一石二鳥のミツバチ
ツアー参加者は山頂にある「あけびの館」でひと休み
前日から下準備しておいた栗を、能勢の新米と一緒に羽釜で炊き上げた栗ご飯
出汁のきいた冷製すまし汁も一緒にふるまわれた
あけびの館に続く道は、木陰が涼しく美しいヒノキ並木。当時流行っていた韓国ドラマ「冬のソナタ」の名シーンを再現したというのが西田さんの自慢……、なのですが、ジェネレーションギャップからか、あまり伝わりませんでしたので、ここで強調しておきます。

お昼ご飯は、羽釜で炊いた栗ご飯のおにぎりと、焼き茄子やトウガンなど秋の味覚が入った冷製すまし汁。来年春に東郷で飲食店をオープンする予定の武田真理子さんと、スタッフたちがつくった自信作です。

栗を育てることは、里山を楽しむこと

山頂のあけびの館から見えるのは、東郷中を見渡せる絶景。ここで、またしても西田さんからの質問。

「これまで見てきたように、この栗山で、栗を栽培しながら色んなことをして遊んでるんやけども、みなさんも、ここでアレやりたいとかコレをやりたいとか、なんかあるかな? 最初にわしのやりたいことを発表すると、しょうもない、なんてことないもんなんやけど……、この山のてっぺんから向こうに向かって紙飛行機を飛ばしたいんや」。

「シュッ、と」と、紙飛行機を飛ばす仕草をする西田さんと、意外な話に顔がほころぶ参加者の皆さん。
小屋を建てるくらい本気で楽しむのも、ちょっとしたことで気軽に楽しむのも、西田流・里山の楽しみ方なのです。

西田さんが考える、能勢で銀寄を栽培することの魅力。それは、単なる産業として栗を栽培するにとどまらず、能勢の里山を、自然を存分に活用して、思いっきり楽しむことである。そんな西田さんの思いが詰まったツアーとなったのではないでしょうか。  
栗を栽培するだけでなく、楽しさや技術を伝える場にしたいと西田さんは考えている
誰が一番大きい栗をひろったのか、実際にサイズを測ったりや計量したりして盛り上がる
本日最大級・3Lサイズの銀寄(43g)。子どもたちの記憶に残る大きさ
「ほんまは、もっといいたいことあんねんー」と、西田さんの声が聞こえてきそうなので、もう一言だけ。じつは、我々なつかしさ推進協議会と西田さんとの大仕事がこの冬から始まります。

その話は10月半ば、まだ緑色だった西田さんちの「あけび」の実が、薄紫に色づく頃にお知らせします。

写真・文/伊藤雄大(@yudai_itou)
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